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土壌微生物のはたらき

土壌改良材のススメ②硝化菌編「植物の栄養吸収をサポート」

植物の栄養吸収にまつわるミステリー

「肥料成分の三角関係?知っておきたい相互作用」のページでは肥料成分の拮抗作用について触れ、肥料成分を入れすぎると、他の成分の吸収を妨げるおそれがあるというお話をしました。土壌分析に基づいてバランスの良い施肥をすることはとても重要だと言えます。しかしながら、肥料のバランスが取れていたとしても、その他の要因によっては植物が肥料成分を充分に活用できない場合もあることをご存じでしょうか。

例えば、キュウリのグリーンリング症という生育障害の事例があります。キュウリの土壌消毒をした後に、ときおり葉っぱの色が淡くなる現象が起こるそうですが、この「グリーンリング症」は、マグネシウム欠乏によるものだと言われています。土壌消毒をしたら肥料成分の欠乏症が発生・・・繋がっているような、つながっていないような、不思議な話ですよね。ミステリーです。

硝化菌のはたらき

その謎を解くカギを握るのが、「硝化菌」と呼ばれる細菌群の存在です。アンモニア態窒素が好気的環境化で酸化(変化)して、硝酸態窒素になることを硝酸化成化といい、その変化を担う菌を総称して「硝化菌」と呼びます。この「硝化菌」の存在は植物の栄養吸収にとって必要不可欠です。

薬剤などによる土壌消毒によって硝化菌の活性が著しく低下した場合、アンモニア態窒素が大量に土壌中に溜まってしまい、拮抗作用によって他のミネラル(カルシウムやマグネシウム)の吸収が妨げられる場合があります。これが土壌消毒後にグリーンリング症(マグネシウム欠乏)が発生するメカニズムだと考えられます。硝酸態窒素はカルシウムやマグネシウムなどと一緒に吸収されていく性質がありますので、硝化菌が働けば万事解決というわけですね。

守ってあげたい硝化菌(?)

「硝化菌めっちゃ偉いじゃん!」と、私は思うのですが、実は彼ら(硝化菌)は結構デリケートで、薬剤による土壌消毒などで大ダメージを受けると復活にかなり時間がかかることもあるそうです。なんということでしょう。そうなると、植物の栄養吸収のメカニズムが一時的にせよ停滞してしまい、生育の低下につながりかねません。いかがでしょうか。有用微生物が元気で、硝化菌がちゃんと働く土壌づくりは非常に重要だと思います。

土壌改良材の施用時期は「土壌消毒・ガス抜き完了後」がお勧め

一般的に、土壌消毒後は土壌微生物の数がかなり(1/10~1/100くらいには)減少します。そのあと、じわじわと微生物は増加していきますが、どんな種類の微生物が勢力を伸ばしていくかは運まかせとも言えます。逆に言えば、このタイミングこそ、人間が土壌微生物の宇宙に干渉する最も効果的な時期だとも言えます。土壌消毒・ガス抜き完了後に腐熟の良好な(微生物的に優れた)堆肥・土壌改良材を施用すれば、その微生物たちが将来の微生物群の先祖・親になり、健全な微生物相を築いてくれることが期待できるでしょう。

これは土壌病害の出にくい、微生物が元気な圃場を作りたいという人にも応用できる考え方です。それについては、「土壌改良材の効能 ③微生物の拮抗作用編」で改めてお話ししましょう。

株式会社ホーネンアグリ 営業部 坂野(土壌医)

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