無農薬米栽培vs雑草 トロトロ層と雑草対策
無農薬米栽培の難しさ
先日、ウェブ系のクリエイターの方とお会いした際に、無農薬米の話題になりました。「無農薬米って、すごく大変らしいですね。取り組みはじめて最初の3年間はひたすら心を削られるような日々だったそうですよ。」と。
確かに、イネの成長にあわせて様々な苦労があることと思います。雑草もどんどん伸びていくでしょう。カヤツリグサ、ホタルイ、ヒエ・・・慣行農法なら除草剤で解決できるのですが、無農薬栽培の場合は人力でなんとかするしかありません。取り逃した雑草が種子を落とすと、翌年に雑草が増えてしまいますし、耕作放棄地のように雑草が繁茂すると、並大抵のことでは元に戻せないとも言います。
人力による雑草対策
地道に除草を繰り返して雑草が生えにくい田んぼにする努力が欠かせないとはいえ、実際には農薬を使わなくても雑草の発生を予防する方法がいくつかあるそうです。田車(または田打車、コロなどとも)という農機具が明治頃から使われているそうですが、手押し車の車輪に爪がついたような形状で、これを使ってイネの条間を耕起するそうです。耕起といっても、浅く田面をひっかくようなイメージですね。こうすることで雑草や雑草の種子を埋没させ、雑草を抑えることができるそうです。
有機肥料による抑草技術もあります。有機肥料を植代かきのときに施用することで、土壌を強い還元状態に近づけ、雑草の発芽抑制を期待するというものです。深水管理を行うと、より効果的だということです。
トロトロ層の形成で雑草の発芽を阻止
トロトロ層という言葉もよく耳にします。水田の土壌表層に米ぬかなどの有機物を入れていくと、イトミミズが活発に動いてトロトロの層が形成されます。そこに雑草の種子が落ちても、トロトロ層の中に沈みこんでしまい、発芽が抑えられるそうです。鳥取県農業試験場の有機・特別栽培研究室の研究によると、イトミミズの数が多いほど、このトロトロ層ができるスピードが速くなるそうです。雑草の量が少なくなる(雑草風乾重が50g/㎡以下になる)には、1日あたり1.3mmのトロトロ層が形成される必要があり、そのために必要なイトミミズ類生息数は23,000頭/㎡以上だそうです。
土づくりは一日にしてならず
冒頭の、無農薬米栽培で成果が出るまで3年かかったという生産者様も、こうした努力を地道に続けられたのだと思います。それにしてもイトミミズ23,000頭/㎡とは、スケールの大きな数字だと思います。土壌微生物や土壌小動物の数は膨大で、味方につければこの上なく頼もしいと言えるでしょうが、数万、数億、場合によっては数兆個の存在が相手ともなれば、一朝一夕に達成できないのも納得です。やはり、土づくりは地道な継続が大切だということを実感しますね。
株式会社ホーネンアグリ営業部 坂野(土壌医)