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連作障害になりにくい健全な土づくり

連作障害とは何か

最近、施設園芸・ハウス栽培の生産者様から連作障害についてのお悩みをうかがう事が多いです。連作障害とは、同じ場所で同じ作物を栽培し続けるとき、年々生育が悪化していったり、収穫量が下がったり、病気などが発生したりといった問題全般を指します。実際に連作障害や生育不良が発生しているという圃場を拝見すると、その原因がいくつかのパターンに分けられることに気づきます。

①化学性の悪化、その対策

原因の一つめは、化学性の悪化によるものです。毎年同様の施肥を続けると、どうしても土壌中の肥料成分にかたよりが生じますが、それが極端な時に生理障害が発生します。ハウス栽培の場合は雨水で肥料成分が洗い流されることがなく、逆に肥料が地表面に集積する傾向にあり、作土のEC値(電気伝導度)が2~3(!)と非常に高くなっている圃場も見かけます。
また、近年の傾向としてはリン酸やカリウムが蓄積した土壌が多くみられ、化学性の乱れが作物の出来に影響する事例が数多くあります。これは単に施肥バランスの悪化という意味にとどまらず、リン酸過剰がカビ(糸状菌)由来の土壌病害を助長しやすくなるというデータもあります。

化学性悪化への対策としては、土壌分析の実施と適切な施肥設計(そして減肥)を行うことが一番です。遠回りで時間がかかるかもしれませんが、正攻法といえます。それで対応しきれない場合は、クリーニングクロップの導入や湛水除塩、深耕による希釈、土壌表層の剥離と持ち出しなどの手法もあります。

②物理性の悪化、その対策

原因の二つめは、物理性の悪化によるものです。これもハウスの方に多いのですが、堆肥などの有機物をあまり重視してこなかった結果、土がカチカチになっている、または土壌硬盤層が形成されているケースです。「原因はよくわからないが、なんだか生育が悪い」という圃場では、土壌改良材の施用によって生育が改善することも多いと思います。「土壌物理性のストライクゾーンを狙え! 土壌物理性診断」でもお話ししましたが、土壌硬度と土壌固相率それぞれが適正だと、根群形成の良好な、つまり根張りの良い土壌になります。

作土の排水性が悪いと土壌病害を助長することがあり、物理性の改善が病害発生の抑制につながる場合も多いと思います。十分に空気を含んだ土づくりは、多くの作物にとって品質向上の重要なポイントといえるでしょう。

③生物性の悪化、その対策

原因の三つめは、生物性の悪化によるものです。つまりは土壌病害の発生です。「土壌改良材の効能 ③微生物の拮抗作用編」でもお話ししましたが、土壌病害が蔓延する背景には、静菌作用をおよぼすべき微生物の減少と微生物相のかたよりがあります。一般的に細菌と比べて糸状菌(カビ類)のほうが薬剤による土壌消毒に耐性があり、消毒後の復活(増殖)も早い傾向にありますから、土壌消毒を繰り返し続けるたびに微生物のバランスが悪化していく恐れがあります。同じ作物を連作する場合、土壌の微生物相は基本的に偏っていきますから、このバランスを取るためには継続的で地道な努力が必要だと考えています。

「土壌改良材の効能 ③微生物の拮抗作用編」でもお話ししたとおり、土壌消毒後のアフターケアとして土壌改良材を施用することで、病害が発生しにくい土壌に近づけることができると考えています。ご興味のあるかたはお気軽にご相談ください。

連作障害対策、健全な土づくりは総合的に 

これらの他に、植物自身が出す「いや地物質」による連作障害などもあるそうですが、だいたいの場合は上記三つのうちのいずれか、あるいは複数の原因が重なっている事が多いと思います。

生育が悪くなったときに、品種の変更や接ぎ木苗の使用、土壌消毒などを行うことが多いと思いますが、単一の対策だけでは十分とは言えません。なぜなら、物理性・化学性・生物性は三位一体といってよいほど密接に影響しあっているからです。このブログの画像にあるように、化学性や物理性の悪化が土壌病害を助長する事例もありますし、土壌物理性を支える団粒構造は微生物に依存しているなど、繋がっているという事実を忘れてはいけないと思います。

重要なのは、継続して耕作に適した環境を維持しつづけることであり、そのためには化学性・物理性・生物性の各要素をバランスよく改善していくことが必要だと思います。場合によっては輪作体系の導入や対抗作物の導入なども視野にいれつつ、総合的な土づくりと防除を考えていただきたいです。

株式会社ホーネンアグリ 坂野(土壌医)

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